ブックカバー | チョコレートと、オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』
そこにあるもの
私は毎日、何杯かの紅茶を飲む。
これは、幼稚園の頃から続いている習慣だ。
幼稚園の頃に住んでいたおじいちゃん、おばあちゃんの家には井戸があって
おばあちゃんが淹れてくれる
市販のどこにでもあるティーバッグ式の紅茶は
名前のとおり
いつも美しく艶のある紅い色をしていた。
おばあちゃんが淹れるとなんであんなに紅くて美味しいんだろうかと思っていたが
あれは、井戸水のおかげだったんだろうか。
子どもの頃に見た美しい紅い色にいつかまた出会えるかなと思いながら
今日もいつものようにティーバッグで淹れた紅茶を飲む。
紅茶は、私の生活の一部なんだな。
最近は、袋入りの「ミルク&ホワイトチョコレート」が紅茶のお供。
そして
甘いものを食べると必ずしょっぱいものが欲しくなる。
みんなそうなのかな。
人は不足を見つけるのがとても上手い。
だけど不足は不幸じゃない。
ただ、ないものがあるだけで
あるものはある。
そのあるものは
その人の大事なアイデンティティに紐づいているのかもしれない。
ないないないに埋もれて
あるが行方不明なんてなんてこった、だ。
オリバー・サックスの『妻を帽子とまちがえた男』に登場する
視覚を失った声楽家は
内なる音楽によってハミングをしながら世界をはっきりと捉えている。
何かがあってもなくても
ハミングしたくなるような暮らしがそこにあるなんて
とても幸せなことだなって思う。
そんなことを思いながら
今日も私のそばには紅茶とチョコレートがある。
著者 / オリバー・サックス、訳者 / 高見幸郎・金沢泰子 『妻を帽子とまちがえた男』晶文社、1998年
ブックカバー | チョコレート
本に寄り添う柔らかさと機能性を備えたシンプルなデザインのブックカバーです。
ナチュラルウールのチョコレートのような焦げ茶色をベースに、下部にナチュラルウールのグラデーションを配しています。
縮絨の際にそれぞれの色が混ざり合い、毎回異なる1点ものの風合いに仕上がります。
※縮絨とは、羊毛表皮にある鱗状のスケールといわれる部分が湿度や摩擦などによって絡み合いフェルト化することです。
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